【04】 制限能力者の行為の取消し・追認

4-1 制限行為能力者の行為の取消し

未成年者が法律行為をするには、原則として法定代理人の同意を要し、これに反する行為は取り消すことができる(5条)。
成年被後見人の法律行為は、原則として取り消すことができる(9条)。
被保佐人が一定の重要な行為をするには保佐人の同意を要し、これに反する行為は取り消すことができる(13条)。
補助人の同意を要する行為につき、被補助人が同意を得ずにした行為は取り消すことができる(17条)。

制限行為能力を理由とする取消しをなしうるのは、制限行為能力者、その代理人、承継人、同意をすることができる者、である(120条1項)。

制限行為能力を理由とする取消しは、制限行為能力者本人においてもすることができる。

制限行為能力者が単独で取消しをすれば、完全に取消しの効力を生じる。
すなわち、取り消しうる取消しではなく、取消しとして有効である。そうでないと、法律関係をいたずらに複雑にするだけだからである。

なお、制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない(21条)。
同意を要する行為について、同意があったと偽るような場合も、取消しができないと解されている。

4-2 相手方の催告権

制限行為能力者の行為は取り消すことができるが(120条1項)、追認により確定的に有効とすることもできる(122条)。
取消権・追認権は、制限行為能力者側にある。

制限行為能力者と取引をした相手方にとってみれば、契約を取り消されるかどうかわからず不安定な立場となる。
そこで、相手方には、催告権が認められている。
だれに対して催告するかによって、次の4つの場合がある*。

① 制限行為能力者が行為能力者となったのち、本人に対して催告する場合(20条1項)。

② 制限行為能力者が行為能力者とならない間に、法定代理人、保佐人または補助人に対して催告する場合(同条2項)。

③ 特別の方式を要する行為**について催告する場合(同条3項)。

④ 被保佐人または被補助人に対して、保佐人または補助人の追認を得るように催告する場合(同条4項)。

①②の場合に、確答がなければ、追認したものとみなされる。
単独で有効に追認しうる者に対する催告であるため、追認したものとみなすのである。

③④の場合に、返事がなければ、取り消したものとみなされる。
単独で有効に追認しうる者に対する催告ではないため、取り消したものとみなされる。

 * 催告は、1か月以上の期間を定めてしなければならない。
** たとえば、後見人が後見監督人の同意を得なければすることができない行為は、特別の方式を要する行為とされる。

4-3 取消しの効果

制限行為能力を理由として取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる。
ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う(121条)。

制限行為能力者は、悪意のときでも、「現に利益を受けている限度」で返還すればよい。
その限度とは、受けた利益がそのままの形で、または形を変えて残っている場合をいう。
消費(浪費)してしまったときは、利益は現存しないから、返還しなくてもよいことになる。
しかし、債務の弁済や生活費の支払にあてたときは、利益は残っているとされる(大判昭和7・10・26)。