【02】 未成年者の行為能力

2-1 未成年者の行為能力

行為能力とは、法律行為を単独で有効にすることのできる法律上の地位あるいは資格をいう。
行為能力は、権利能力と異なり、制限される場合がある。

未成年者とは、20歳未満の者である(4条)。
未成年者の行為能力が制限されるのは、利害関係を適切に判断することができず、不利な契約をしてしまうことがあるからである。
行為能力の制限は、制限行為能力者を法的に保護するための制度である。

なお、婚姻した未成年者は、成年に達したものとみなされる(753条)。
つまり、婚姻した未成年者は、完全な行為能力を有する社会人として扱われる*。

未成年者の法律行為には、原則として、法定代理人の同意が必要である(5条1項本文)。
法定代理人とは、ふつうは親権者であるが、親権者がいないときは、未成年後見人が選任される。

未成年者の法定代理人である親権者や未成年後見人は、代理人であり、同意を与えるだけでなく、未成年者に代わって契約をすることもできる。
乳児等は、自分で意思表示することができないので、もっぱら法定代理人が代理権を行使することとなる。

* 婚姻の解消によっても、成年擬制の効果は消滅しない(通説)。

2-2 贈与の承諾等

未成年者の行為能力を制限するのは、未成年者保護のためであるから、未成年者に不利益がない事柄については制限する必要がないこととなる。

単に権利(利益)を得たり、または義務を免れるだけであるなら、未成年者においても単独で有効な意思表示ができる(5条1項ただし書)。
たとえば、未成年の学生が学費の贈与を受ける契約をする場合には、親権者の同意は不要である。

しかし、負担付きの贈与を受ける場合のように、「単に権利を得」るとはいえない場合には、原則どおり、法定代理人の同意が必要である。

また、債務の弁済を受けることは、これにより既存の債権を失う(消滅させる)から、未成年者が単独ではなしえない。

2-3 未成年者の意思表示の効力

法定代理人の同意を得ない未成年者の契約は、取り消すことができる(5条2項)。
未成年者自身が取り消すことができるほか、親権者等の法定代理人が取り消すこともできる(120条1項)。

取り消すことができる行為は、取り消すまでは有効である。
また、未成年者が法定代理人の同意を得ずにした契約について、のちに法定代理人が追認すれば、取り消すことができる行為は確定的に有効となる(122条)。

取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消しまたは追認は、相手方に対する意思表示によってする(123条)。

2-4 未成年者が単独でなしうる取引

法定代理人が目的を定めて処分を許した財産、たとえばケーキ代として渡したお金、また、目的を定めないで処分を許した財産、たとえば100円の小遣いなどは、未成年者が単独で処分することができる(5条3項)。

これらの随意処分については、取消しはできないことになる。

2-5 営業の許可

未成年者に包括的な取引の能力を与える方法として、営業の許可がある。

ここで営業とは、独立の事業であり、他人に雇われることではない。

未成年者でも、法定代理人から営業の許可を得ることにより、独立して事業を営むことができる。
法定代理人は、営業の種類を限定して、営業の許可をする。

一種または数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する(6条1項)。

未成年者の営業を許可した場合でも、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、法定代理人において、営業の許可を取り消し、または制限することができる(同条2項)。
ここでの取消しは、撤回という意味であり、遡及効はなく、将来に向かってのみその効力を生ずる。

2-6 詐術による取消権排除

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない(21条)。
制限行為能力者が保護に値しない行動をとった場合であり、むしろ、だまされた契約の相手方を保護すべきだからである。

同条の趣旨から、取消権が排除されるためには、詐術の結果、相手方が誤信したことが必要であり、かつ、詐術と相手方の誤信との間に因果関係のあることを要する。

未成年者の場合、成年者であると偽ったようなときには、取消権が排除される。
未成年者自身も、親権者等の法定代理人も、この場合には契約を取り消しえない。